「つくりかたの未来」を創る側へ
1. デジタルファブリケーションのパーソナル化
現在、作るモノの構想と準備を進めつつ、デジファブ生活を始めるにあたり、通勤時間などの合い間に幾つかのデジタルファブリケーションに関する書籍を読んでいます。今回、まず手始めに読んだのが「FabLife-デジタルファブリケーションから生まれる『つくりかたの未来』」で、著者は新しいものづくりの世界的ネットワークであるファブラボの日本における発起人であり、2011年に「ファブラボ鎌倉」を開設した田中浩也氏[1]。(田中氏は現在、慶應義塾大学環境情報学部の教授。)
私は、その著書を読んで、田中氏の考える「デジタルファブリケーション」を下記に示すのように解釈しました。
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「デジタルファブリケーション」とは、コンピュータ上のデジタルデータを3Dプリンタやカッティングマシン、ミリングマシンなどの「コンピュータ周辺機器としての工作機械」によって、素材を加工する手法である。
その「デジタルファブリケーション」が下記に挙げる2つの動きを両輪として、その技術の「つかい方」が「パーソナル化」(=「パーソナルファブリケーション」)されて行く。
(1) デジタル工作機械の小型化・コンパクト化による「デスクトップ化」
=「デジタル工作機械の個人化」
(2) ネット上と物理的な「場」での「つくるための知識の交換と共有」
(物理的な「場」=「ファブラボ」)
そして、「パーソナルファブリケーション」は、個人や少人数のチームでも、より多くの創造的な仕事を実現可能にする。また、その「パーソナルファブリケーション」は「大量生産・大量消費・大量破棄」と「つくる人と使う人の極端な分断」という2つの問題をもたらした20世紀型の製造業を、教育であり、産業であり、芸術でもあるといった「総合性」や「多義性」をもつ、産業革命以前の「ものづくり」の時代の精神を現代の目でとらえ返し、今の技術環境の上にアップデートしていくものになる。
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私としては、何となくデジファブを「ファブリケーション×ソーシャル」を軸にした世界と考えてましたが、これにデザイン(アート)を加えた「ファブリケーション×デザイン×ソーシャル」の3つが組み合わさった世界なのかなと感じました。モノのデザインを「選ぶ」ものから「創る」ものへと変えることのできる、職人の工房のような環境がオープン化された未来が、今、一人一人の目の前にある、そんな感じでしょうか。そして、そこを自分の「しごと」の場、「あそび」の場、そして、「まなび」の場にすることができたら、、、と考えてしまいます。とにかく行動あるのみですね。
2. 「つくりかたの未来」はどうなるか
さらに「FabLife」の中で田中氏はファブのデジタル化ならではの意味として、以下の4つを挙げています。
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(1) ラピットプロトタイピングからリピートプロトタイピングへ
(2) デジタル・マテリアリティとテクスチャリティ
(3) オープンソース化
(4) 適量生産・変量生産
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私が特に気になるのは、リピート・プロトタイピングです。即座にフィードバックがなされる環境では、試行錯誤の繰り返しにこそ、価値があるということでしょうか。
これまでの私の仕事では、開発コストの抑制のために、できる限り失敗をしないように事前の想定や仮説構築にかなりの時間をかけていましたが、低コストで高度なことが短期間でできるようになった今、この考え方は変えなければならないのだろうと思います。子供の時の工作のようにスクラップ&ビルドを繰り返す、この好奇心と行動力が、「しごと」と「まなび」と「あそび」を近づけるのかもしれないですね。その他の3つに関しては、私にとっては実際に手を動かしてからという感じですね。それらを考える領域に早く到達したいところです。
そして、その流れの延長線上には、田中氏が描いている資源循環型のエコロジカル・ファブリケーションやビット(情報)のプログラミングから「プログラムできる物質(Programmable Matter)」によるアトム(物質)のプログラミングへの移行が実現される未来があるのかもしれないし、そのときは必ず「創る側」でいようと思います。
3.「ファブラボ」に行ってみたい
最後は、モノを「つくるための知識の交換と共有」の物理的な「場」となる「ファブラボ」について。この「ファブラボ」とても気になります。
田中氏が開設メンバーの一人となっているファブラボ鎌倉[2]は、2015年に運営形態が変わったようですが、今でも様々なイベントが開催されているようです。その中では、現地での「はじめてのFABLAB講座」やオンライン講座の「Fusion 360で学ぶ3Dモデリング」あたりを受講してみたいところです。都内だと神田錦町[3]にあるようなので、こちらも将来的には利用してみたいですね。
【参考資料/サイト】
[1] 田中 浩也著「FabLife-デジタルファブリケーションから生まれる『つくりかたの未来』」(オライリージャパン)2012年
[2] FabLab Kamakura URL: https://www.fablabkamakura.com/(アクセス日: 2018/5/18)
[3] FabLab Kanda Nishikicho URL: http://fablabkn.tokyo/(アクセス日: 2018/5/18)
FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)
- 作者: 田中浩也
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2012/06/09
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